越前漆器と鯖江市 Vol.189~192

「ものづくりのまち・鯖江」

当社所在地である「鯖江(さばえ)」という住所のイメージとしては、「眼鏡の産地で有名なところ」 という印象をお持ちのお客様が多いようです。実際のところ鯖江市の眼鏡産業はチタンなどの金属加工技術をもとに メガネフレームの全国シェア9割、世界シェア2割を占め、イタリア、中国とならんで世界3大眼鏡産地のひとつと言われています。 眼鏡産地としては2005年に生誕100年を迎えました。また、他にも鯖江市は高度な技術力を活かしながらポリエステルや ナイロン素材をベースとした国内合繊織物の主産地としても知られています。1500年の歴史を誇る「漆器」とともに「眼鏡」と 「繊維」が鯖江市の3大地域産業であり、関連事業とあわせると鯖江市の生産額の8割以上を占めています。
鯖江市の産業に共通する特徴はその事業所のほとんどが中小、零細企業であることです。こうした事業者が業種の枠を超えて 参加している経済団体「鯖江商工会議所」は今年50周年を迎えました。商工会議所を中心とした活動や産業支援を通じて、 近年の厳しい時代を乗り越えていく様々な取り組みが活発に行われています。
20090710
■「創立50周年記念事業」に関する鯖江商工会議所発行の会報
http://www.sabaecci.or.jp/public/img/kaihou/09-07-01_090701124136.pdf

「鯖江商工会議所による支援事業」

中小・零細企業がほとんどの越前漆器の産地では、販路拡大やPRのための展示会開催や出展のために「鯖江商工会議所」が様々な支援活動を行っています。「商工会議所」とは、「商工会議所法」に基づく特別認可法人「日本商工会議所」のもと全国各地に515、会員数138万人(平成20年3月現在)から構成されている経済団体です。特徴としては、(1)「地域性」(地域を基盤としている)、(2)「総合性」(会員はあらゆる業種・業態の商工業者から構成される)、(3)「公共性」(公益法人として組織や活動などの面で強い公共性を持っている)、(4)「国際性」(世界各国に商工会議所が組織されている)の4つがあげられます。
「鯖江商工会議所」が行う漆器産業への具体的な支援としては、
■越前漆器展覧会への協力
■全国漆器展覧会出展への協力
■展示会(ギフトショー、ハウスウエアショー等)出展への協力
など金銭的な支援です。また最近では経済産業省主管の「JAPANブランド育成支援事業」や「広域・総合観光集客サービス支援事業」などの事業窓口、事業主体として地域産業を国内外へ大きく発展させていくための支援を行っています。特に厳しい昨今の経済情勢の下、私たち中小・零細企業が伝統工芸を維持、発展させていくためには、自助努力の自助、行政や商工会議所の様な公的機関による助成の公助、いろいろな人の力を借り連携する共助の3つの助で推進していくことが必要と考えています。
20090717
■「鯖江商工会議所」公式ホームページはこちら http://www.sabaecci.or.jp/

「産業都市としての観光への取り組み」

漆器、眼鏡、繊維を中心とした産業都市である鯖江市では、 近年「観光地」としての街づくりへの取り組みが進んでいます。その背景としては、 消費地のお客様が「いわゆる観光地」と呼ばれる景勝地や神社仏閣などを巡る旅行よりも 一歩踏み込んで人とは異なる体験型の旅を求めるようになってきたこと、 受け入れる産地側も伝統工芸品の需要回復や産地の活性化にはモノづくりの実演や体験などによって 消費地のお客様に産地のファンになってもらうことが重要という考えによるものです。
全国的にみると輪島塗と和倉温泉、山中漆器と山中温泉など近隣の温泉地と連携して観光とつなげる 漆器産地も見られますが、越前漆器の産地周辺には温泉地がなく地理的にも観光ルートから外れているため、 昔から越前漆器の産地を訪れる県外のお客様は消費地の問屋や専門店からいらっしゃる方が中心でした。 そこで行政や組合を中心に「うるしの里会館」の整備や各職人の工房を自由にまわれる仕組みづくりなどハード面をすこしずつ 構築してきました。一方で人的な対応やツアー企画の内容などソフト面においては観光目的のお客様に十分に楽しんでいただく レベルに至っていないのが現状です。
こうした中、平成19年度より鯖江商工会議所などが中心となり「広域・総合観光集客サービス支援事業」という 国の補助事業を活用した観光客受け入れ準備がスタートしました。「越前漆器」「越前和紙」「越前打刃物」「越前焼」の 伝統工芸産地が隣接するという地域特性を活かした「伝統工芸体験施設めぐりバスツアー」などをはじめ、 今年度もさまざまなモニターツアーを実施して「ソフト面の向上」に取り組む計画をしています。ぜひとも消費地のお客様に このような地方の取り組みに関心を持っていただき、一人でも多くの方に越前漆器産地のファンになっていただくことが できればと考えています。
20090724

「鯖江市の東部に位置する漆器産地」

鯖江市という地名を見て「鯖がとれるところ」と想像される方がいらっしゃいます。福井県というと「焼き鯖」が有名な小浜市などがあり、鯖江市も海や魚に関係があるような印象がありますが実際には鯖江市は海に接していません。「鯖江」の由来は、約2000年前に北陸街道の賊徒討伐の際に使われた矢が鯖の尾の形をしていたことからその地名を鯖矢と呼び、後に転訛して鯖江になったという説が有力のようです。
鯖江市東部の山間に位置する漆器産地で育った私などは、同じ鯖江市に住んでいるにもかかわらず「鯖江」というと、「中心部」「市街地」というイメージを持っています。よって、今でも産地では「ちょっと鯖江まで買い物に行ってくる」といったような使い方をしています。漆器産地のある「河和田(かわだ)地区」は、鯖江市の中心地から8キロほど「奥まったところ」に位置しており、雪の量も中心地よりも数センチ多く降ります。以前、漆器産地ができる特徴として「山に囲まれて材料が入手しやすい」「雪が多くても関係なく仕事ができる」「湿度や温度が漆器づくりに適している」ことを紹介しましたが、東部の「河和田地区」は鯖江市でそれらすべての条件を満たしている場所であり、漆器関係の事業者が集中して産地を形成しています。
(山本泰三)
20090515
うるしの里会館 アクセス地図
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