信頼できる売り場づくりにむけて Vol.205~208

「つくり手の思いを託す」

漆器売り場にてご購入を検討されているお客さまに対し、ご満足いただけるご提案を販売員が行うためには、「売り場の信頼感」が最も重要な要素であると考えています。漆器とひとことで言っても材質や工程、産地、価格など違いが多岐にわたること、特に漆器は修理などのアフターケアが安心感につながるという特徴をもった製品だからです。昔は「高いものほどよい」とか「このお店の包装紙に包んであれば安心」ということで売れた時代もあったようですが、情報化がすすみ価値が多様化した昨今は、正確な情報をしっかりとお客様にお伝えしたうえではじめてご購入いただける時代になりました。
ライフスタイルの変化とともに漆器の需要が減り、漆器売り場も縮小傾向にありますが、私どもつくり手としてはこれまで以上にお客様との接点となる販売員の知識を向上させて信頼感を高めるとともに、さらにつくり手の思いを託して「価値」を語っていく必要があると考えています。当社では販売員むけに積極的に勉強会や説明会を開催しながら、販売員からお客様に正しい情報が伝わるよう努力を続けています。
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「製品カタログの工夫」

当社では自社製品をご紹介する製品カタログをご用意していますが、一昔前までの主な用途は漆器に関する知識が豊富な百貨店や専門店の販売員や問屋の方にお使いいただくものでした。よって内容は製品そのものについて整然とご紹介すれば十分というものでした。しかしながら、近年の「和ブーム」「ネット販売需要」にあわせて一般のセレクトショップやインターネット販売を運営されているお店でも漆製品を扱いたいというお声が高まり、漆器についてのわかりやすい情報を広く提供する必要が生じました。情報化社会において、エンドユーザーの方も正しい情報を得てはじめて漆器を購入していただけるようになりました。
当社ではこうした世の中の変化をとらえて、カタログの内容に漆器の使い方や素材の特長、漆器の工程などを掲載し、「漆器の教科書」としてお店で利用いただいたり、お客様に直接お渡しいただけるカタログづくりに取り組んでいます。漆器の販売に不慣れな販売員の方にも安心して漆器を取り扱いいただくことで、結果的に信頼できる売り場づくりへとつながります。カタログを通じて一人でも多くの方に漆器についてご理解いただけることを強く願っています。
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製品カタログに関するお問い合わせ、資料請求は以下までご連絡ください。
メールアドレス:kasane@yamakyu-urushi.co.jp

「アフターケアの提案」

漆器の特徴のひとつが「修理できること」です。木製・漆塗りの漆器は傷や割れ、剥がれが発生しも修復可能なので、「このお店では<修理>もお受けします」と漆器の特徴とともにアフターケアの一言をつけて販売すればお客様は安心し、お店のことを覚えておこう、また来ようというリピートのきっかけになります。塗りなおしなど修理方法によってはさらに塗りが厚くなって器が丈夫になることをお伝えすれば、お客様のほうも最初から傷などを恐れることなく、積極的にお使いいただけることでしょう。
修理して繰り返し半永久的に使える漆器はこれからの時代が求める「エコロジー」というキーワードにもあっています。こうした付加価値を売り場でしっかりとお客様にお伝えすれば表示されている価格の見え方も違ってくるとともに、お店に対するイメージアップにもつながります。
修理方法としては部分修理か、全体的に行うかなどお客様のご予算に応じた提案が可能です。こうした細部にいたるアフターケアまでお客様にご提案できることが漆器売り場の信頼を高めます。実際に修理作業を行う私たち産地メーカーとお客様の窓口である売り場が密接に連携しお客様に安心して買っていただくための対応を協力して行うことが今後の漆器需要を伸ばしていくために必要なことであると考えています。

【修理例 / 二段弁当箱 溜】
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■アフターケアの提案でお店の信頼が高まる。

修理に関するコラムはこちら
重箱のお直し Vol.173~176

「産地での販売打合せ」

多くの漆器は消費地の百貨店や専門店、セレクトショップなど漆器産地から離れた場所で販売されています。 漆器は産地の職人によって何工程もの作業を経て完成することや産地の職人の手で修理などのアフターケアが行われていることを販売員から 生きた言葉でお客様にお話できれば、漆器に対するお客様の理解が深まり、価値が高まります。 そういう観点から販売の現場にいる方には可能な限り産地に一度足を運んでいただき産地の様子を見学したり、産地での打合せをお願いしています。
漆器の需要が多かった20年以上前までは、漆器を扱う問屋業の方が百貨店の販売担当者と一緒に頻繁に産地に来ていましたが、 最近では産地に来られる回数も減ってきた印象です。インターネットの普及でさまざまな情報が簡単に入手可能になったことも 背景にあるかもしれませんが、百聞は一見に如かずという言葉があるように、販売側に携わる方にはぜひ産地に来て工房をご覧いただき、 漆器づくりに携わる我々や職人と直接話をしながら漆の知識を吸収していただくことをおすすめしています。
(山本泰三)
20091120