お子様向け新製品の開発 Vol.265~268

「<おこさまうるし>への挑戦」

昨年より当社では小さいお子様の成長にあわせてお使いいただける新たな漆器づくりに取り組みはじめました。これまで当社でも 儀式的にお使いいただく「お喰い初め膳」などはご用意していましたが、当社のオリジナル商品としてブランド化し、日々使って いただける子供用の製品を本格的に開発するのははじめての取り組みです。
この取り組みの背景には、近年の少子高齢化にともなって、子供や孫には「より安全でよいものを使わせたい」という家族や周囲 の意識が高まってきたという時代の流れがあります。漆器は繊細で面倒なものという印象から特に女性の漆器離れがすすんでいる 昨今、小さな子供を持つ女性や家族をターゲットに「漆器は天然の抗菌作用があり、落としても割れず子供が安心して使える器で ある」という一面を作り手からアピールできる絶好の機会ととらえました。
もうひとつのきっかけは、私自身に昨年6月子供が生まれて初めて父親となり、親の目線で「こんな製品が欲しい」と考える立場 になったことです。自分の子供に試作品で実際に食事を与えたり、いつも買いに訪れるベビー用品売り場で「市場調査」をしなが らの製品開発は、購入されるお客様の立場にたったモノづくりのためには最高の環境でした。
当社の子供むけ漆製品のブランド名は「おこさまうるし」に決まり、今年9月にお椀、今月はお箸をリリースしました。次回は、 こうした製品づくりへのこだわりについてご紹介します。

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「ギフトにも使えるお椀をめざす」

当社がお子様むけオリジナル製品開発の第1弾に選んだアイテムはお椀でした。古くから「お喰い初めといえば漆器」といわれ正式な お喰い初め膳にもセットされるお椀は、お子様むけの最初の製品にふさわしいアイテムと考えました。毎日の需要という観点でも、授 乳期がおわり離乳食がはじまるタイミングから「うっかり落として割れない安全な器」が必要になります。
現在、市場ではどのような器が売られているのかと都内有名ベビー専門店をのぞいてみると、主にプラスチック製の機能的な器が中心 でした。気軽に使えて便利そうなもののギフトむけには少し安っぽい印象があり、今回の開発テーマを「ギフトニーズにもお応えで きる、より魅力的なお椀」と設定しました。また具体的なポイントとして「子供が好きなかわいらしいデザイン」、「使いやすい形状 と素材」、「魅力的な価格」の3つを重視することにしました。
「デザイン」のところは、小さな子供をもつ同世代の女性デザイナーに協力いただきました。子供がみんな大好きなボールをモチーフ にした絵柄を(一般的な外側ではなく)お椀の内側に金色で施し、ベースの色は漆らしい「溜」または「洗朱」の2種類にしました。 さらに、ギフト用パッケージには、遊びごころいっぱいのカラフルなものを準備しました。 「形状と素材」の点では、倒れにくいように高台が低いものを選び、冷蔵庫に入れても変形の心配がない木粉入りの成型樹脂素材にし ました。(木製くり抜きではなく)成型品にしたことで普段使い用として価格面を抑えることができ、適度な重さによる安定感も生ま れました。塗料については、天然の抗菌効果が持続する「天然漆塗り」にこだわりました。 「ボールのボウル」と名づけた漆塗りのお椀は、販売の立場にいる方のご意見も参考に、漆塗りの小さじつきで3990円(税込) という価格設定にしました。検討着手から約1年後の今年9月より、東京都内の百貨店ベビー用品売り場で販売を開始しました。

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「ボールのボウル」詳細内容はコチラ

「手描き名入れでオリジナルギフト」

手づくりによる漆器ならではの良いところは、プロの手による「名入れ」ができることです。 特に蒔絵職人の手描きによる名入れは伝統的な蒔絵と同様に剥がれにくく、安心してお使いいただけます。 お子様が使う道具に大切なお名前をしっかりお入れして贈り物にすれば、 贈る側にとってはオリジナル性に富んだ価値あるギフトになり、受け取る側のお子様のほうも「自分だけの器」 を手にして大変うれしいものです。
今回開発したお子様むけお椀「ボールのボウル」は、お客様のご要望に応じて 蒔絵職人による名入れをオーダーいただける仕様にしました。お椀の側面もしくは 裏返した高台の中にお名前を描くスタイルで昨年9月から販売を開始したところ、 名入れ有りでのご注文を多数いただき、ニーズの高さを実感しているところです。漢字やひらがなにかぎらず、 外国のお客様とみられるカタカナでのご注文もいただいております。
手描き蒔絵による子供むけオリジナルギフトとしては、「名入れ」のほかに「家紋入れ」のニーズもあります。 たとえば、お孫さんのお喰い初めにあわせておじいちゃんやおばあちゃんからのプレゼントとして 漆器をご検討される際に「家紋をいれて贈りたい」というお話をいただきます。私たちの毎日の生活で家紋 というと遠い存在になりつつありますが、家紋は日本が誇るすばらしい意匠であり古来より漆器とはデザイン的にも相性がよく、 あらためて家紋に目をむけて、日々の道具にいれて使ってみることは素敵なことだと思います。 お子様むけギフトに大切なお名前や家紋をお入れした漆器をぜひともおすすめいたします。

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「ボールのボウル」詳細内容はコチラ

「成長に大切なスプーンとお箸」

お子様むけの新製品の第二弾として開発したアイテムは、お子様が食事をいただくときの道具「スプーン」と 「お箸」です。一般的に漆器のアイテムとしては、スプーンやお箸は付属的な小物という扱いをしますが、 すくすく成長する過程で子供が使う道具としてみれば、しつけの意味も含めてとても大切なアイテムといえます。
スプーンとお箸についても、お椀と同様いま私自身が取り組んでいる育児の視点から、 仕様を決めながら開発をすすめました。素材は独特の軽さやぬくもりがある天然木にこだわり、 高い抗菌効果が科学的に証明されている漆塗り仕上げにしました。木製漆塗りの小さじを手に持った赤ちゃんが、 (金属スプーンに比べて)口にいれて遊んではなかなか手からはずさないという話は、 赤ちゃんが本能的に「木製漆塗り」を快適な素材と感じているのかもしれません。
スプーンの形状については「握りやすさ」と「口に入れた時のスムーズさ」にこだわり、 一般的に食べやすく作られている金属性スプーンにあわせて、木の加工の限界まで形状を追究しました。 風になびく葉のイメージと、はぁふぅして使っていただく音をかけて、「葉風(はふう)」と名付け、 子供から大人まで幅広くお使いいただける仕様にしました。
一方、お箸の形状については、持ち手部分を三角にして「握りやすく」するとともに、 箸先を四角にすることで食べ物を「つかみやすく」しました。 箸の頭の三角から箸先の四角へ次第に変化するこの形状は、子供の遊び心をくすぐるとともに、 丸型に比べて転がりにくいなどシンプルな中に機能性を持たせました。 さらに、日本の伝統色「白藍(しらあい)と蘇芳(すおう)」 「菜の花色と藤紫(ふじむらさき)」を箸の頭にデザインし、和食を美味しくいただける色づかいにしました。
今後もお子様むけの漆器「おこさまうるし」の開発を通じて、 幅広い世代に漆器のすばらしさを発信してゆければと考えています。(山本泰三)

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木製漆塗りスプーン「葉風(はふう)」の詳細はコチラ
「おこさまうるし」シリーズのお子様むけお箸の詳細はコチラ