漆器は修理ができます Vol.5~8

(その1)

伝統的な漆塗り木製の漆器は大変丈夫なものですが、お使いいただくなかで一部が欠けたり、割れたり、表面にヒビが入ったりすることがあります。また、変色や、加飾がはがれることもあります。
それが特に高価なものであったりすると、使われる方の心理的なショックは大きく、またそうなることを心配していると、とても普段使いなどできない、漆器を使うのは控えよう、そしていつの間にか押し入れの奥に・・・ということになります。少しでも長く使っていただこうと堅牢な漆器づくりを目指している我々メーカーとしては大変残念に思う事です。
でも、実は木製・漆塗りの漆器は、修理によってもとの姿に戻すことが可能なのです。
漆器は、修理をしながら10年でも20年でもお使いいただける器なのです。

(その2)

よくお客さまから漆器の取り扱い方法を聞かれますが、伝統的な漆塗り木製の漆器については「人肌よりちょっと強いものと考えてください」とお答えしています。乾燥に弱いため長時間の冷蔵庫収納や食器洗浄機を避けていただくこと、紫外線に長くあてると変色するため直射日光を避けることなどが注意点です。
人肌が大丈夫なように、お湯や石鹸を使っていただいても全く問題ありません。そして、肌が荒れたり、怪我をしたときに早めにお手入れすれば早く回復するように、漆器も傷んだら早めに修理を行えば、もとの姿により近い形で修復できます。
これまで当社でも数多くの修理をおこないました。漆の色は自然に変化するので、修理前と全く同じ色で仕上げることは困難ですが、それでもほぼ全てのお客様が修理後の漆器にご満足されます。
修理はすべて天然の木と漆を使っておこないます。
修理して長く使える漆器は究極のエコロジー製品です。

(その3)

当社で漆器の修理依頼をお受けするときは、お医者さんが病気の診断をするように、必ず現物を見せていただき、木地の傷み、塗りの傷み、加飾の傷みの程度をみて修理ができるかどうかの判断をします。
特に重要なポイントは、その漆器が下地(木の素地の上に最初に塗料を塗る行程)に漆を使っているかどうかです。割れたり欠けたりした部分を見れば、漆を使っているかどうかがわかります。下地に漆を使わない漆器を修理しようとしても、傷んでいる周辺が後から剥げてしまうなど修理が出来ないケースがあります。
逆に、下地に漆を使った漆器であれば、木地の一部が欠けてしまった場合でも、生漆に木紛と米糊を混ぜた「こくそ漆」で補修が可能です。傷んだ部分を補修し、最後に全体を上塗り(仕上げ塗り)すれば、新品同様の姿に戻ります。

(その4)

お手元の漆器が修理できると判断させていただくと、次にお客さまが気になるのは、「修理代はいくらぐらいかかるのか」「何日ぐらいでできるのか」ということです。
当然、傷み具合や、商品の種類によって差が出ることはもちろんですが、お客さまがどの程度まで修理をされたいか、ということによっても異なってきます。「長年使った風合いを残したい」というお客さまには部分的な修理をおすすめします。「形は残しつつも、新品同様にして使いたい」というお客さまには、全体を塗り直して仕上げます。
全て塗り直した修理代の平均的な目安としては、同じ形・材質で無地(加飾がないもの)の新品の約50~60%ぐらいとなります。修理の日数としては1~2ヶ月お預かりするイメージです。部分的な修理であれば、お値段も安くなり、日数も少なくてすみます。
お客さまに「漆器は修理ができること」を知っていただき、どんどん使い込んでいただきたい、というのが我々漆器づくりに携わるものの願いです。